お母さん楽になっていますか?

開業をして20年余り。以前に比べると産後のお母さんがきれいになったと感じます。というのは以前は訪問時にパジャマであったり髪振り乱して....というお母さんがいましたが今は皆お化粧をしてきちんと着替えていることが多くなりました。ではお母さんたちは子育てにゆとりが出てきたのでしょうか?近年産後の鬱や虐待の話を聞く度、お母さんの綺麗さと子育てでの余裕とは比例しないのではないか?逆に綺麗さが増すほどに子育ての孤立化や不安は増しているのではないかと感じます。それは家族関係であったり些細なことを相談できたり愚痴をこぼしたりする人間関係の希薄化。みんなが孤で生きているからだと思うのです。小売りの店からスーパーへ。そして今ではネットで買い物ができる時代になりました。誰とも話さずの日常。話すためにはあえてどこかに出ていく必要に迫られるなりました。でもこの”あえて”ということ仲間作りという事が難しくなっていて更に孤独になり、頼りはネット情報だけになって追い詰められているように感じます。世の中が変化をしていっても夫や子供との家族という関係は密のままです。そのギャップをどう乗りこなしていけるか?そこにかかっているように思います。

相手に寄り添うという事

先週日曜日の読売新聞に「こどもホスピスの軌跡」という本の紹介がありました。看護学校に入学したての頃、看護学の授業では「死」についての授業が多く、私は生きている人のために看護師になろうとしているのに何で死についてばかり勉強しなければいけないのか?と暗い気持ちになりました。そして小児科実習ではわずか1歳6か月でいつ亡くなるかもしれないという女の子を受け持ち、それまで明日があることや将来を語ることが当然と思っていた私にわずか2回目の誕生日すら迎えられない子がいるという現実が突きつけられた出来事でした。そんなことを思いながらこの本を読んだとき子供であっても本人が望むこと、家族が望むことに対してどこまでも寄り添うという姿勢で取り組むスタッフの姿勢に感動しました。医療者として働いていると日々忙しく、ゆったりと流れる患者さんの時間の流れとのギャップを感じます。そして時間の流れだけではなく明日というものへの思いの違い。今、この瞬間がどれだけ大切か!そんなことを改めて感じ相手に寄り添うためには感性を研ぎ澄ましていかなければという思いを強くしました。

数値では表せない違い

母乳とミルクでは栄養的に違いがない!?お母さんの食べ物で母乳の成分は変わらない!?いずれも成分の分析などをかけてエビデンスによる回答という形で出されることがあります。ここでいつも引っかかるのは数値はそれほど正確なものなのか?という事です。先日テレビを観ているとチーズ職人の方が納得のいくチーズを作るためには原料となる牛乳が大事で、それは放牧によりたくさんの種類の草を食べている牛の牛乳が必要だという話がありました。成分分析では放牧牛も牛舎で餌を与える牛も変わらないという事ですがチーズの奥深い味を出すにはやはり違いがあるとのことでした。それは人にも言えることでいくら成分分析で変わらないと言われても乳腺炎になりやすいお母さんは食事によって変わりますし赤ちゃんの飲み具合も変わります。毎日毎回そんな微妙に変化をする母乳の味をかみしめながらおっぱいを飲んでいる赤ちゃんの味覚の発達が味の変わらないミルクを飲むことと同じだと言えるのでしょうか?

新しい年に

コロナ禍の中新しい年が明けました。まだまだ予断を許さない状況ではありますが年が改まったことでの期待を寄せています。そんな中今年はどう生きていこうか?と年の初めにあたり思いめぐらしています。そろそろ頑張りのきかない年齢になってきているので気力・体力と相談しながらではありますがそれでもアンテナを高く張っていきたいと思います。時代の流れと共に変わっていくことと、変わってはいけないこと。それを伝えていくことが役目でもあるのではないかと思います。今年も縁あって出会えた方々に精一杯の関わりをさせていただけるよう努めていきたいと思います。

映画「GOGO(ゴゴ)94歳の小学生」

今日の読売新聞朝刊で映画「GOGO(ゴゴ)94歳の小学生」という広告を見つけました。おぉ~94歳!と思って読んでいくとなんとGOGOさんは助産師であると!!さすが助産師‼と思うと共にかつての大先輩方の姿を思い出しました。助産婦学校の学生だった頃、助産所実習という事で開業されている先生方の所で1週間お世話になりました。その頃の先生方はまさに戦前から仕事をされていて戦争中の話、戦後のベビーブームの話など貴重なお話をたくさん聞かせていただきました。そして何よりの違いを感じたことは”先生”と呼ばれ凛とした佇まいと誇りに満ち溢れた姿をされていたことです。実習中近くのとんかつ屋さんに連れて行っていただいた時「ここのうちは親子3代私が取り上げたのよ!」「学生全員にお銚子1本づつ!」と。学生「先生、もしお産があったらどうするんですか?」先生「酔ってお産が取れないようじゃ助産婦じゃないわよ!」の言葉にカッコイイ~!と思ったものです。80歳を過ぎてもお産を扱い、講習会にも通っていらした大先輩方!その姿を思い出しGOGOさんの学ぶ姿に励まされました。やっぱり助産師ってすごいなあ~!