産婆魂を受け継いで

人類の歴史の中でもかなり前から妊娠・出産に携わる女性の存在がありました。日本でも助産師の資格が出来た頃は産婆と呼ばれ、始めの頃は夫を亡くした未亡人に入学資格が与えられていました。それが第二次世界大戦後大きな法律改正があり時を経て今のような形になりました。戦後助産師の行える仕事の範囲はそれまでより制限されたり、助産院を開業するよりも病産院で働く割合が増えその様子も変わってきました。とはいえ学生だった頃は戦前からの開業助産師の先生方のところで実習をさせていただいたりお話を聞かせていただくことができ、母子の命を預かる責任とその力強さに圧倒されました。今、助産師教育は専門学校から看護大学に移ってきていますがその中で感じることは助産師という職業にある産婆魂のようなものが薄れてきているということです。知識や技術ではなく助産師とは何する人ぞ!?という思いです。若い頃、おっぱいで第一人者であった山西みな子先生のセミナーを受けたとき「私は生涯臨床家でありたい!」との一言を忘れることができません。セミナー後にご挨拶に伺うと初対面にも関わらず「あなたが手に負えないことがあったら患者さんと一緒にいつでもいらっしゃい。教えてあげるから。」と言っていただきました。年中無休で母乳相談室を開き常に母たちと向き合いそのあり方を追求し続けた姿は今の私の目指すところでもあります。名前が産婆から助産師に変わっても、教育課程が専門学校から大学に変わっても助産師とは何か?という問いを追い続けることに変わりはありません。先輩方から受け継いできた産婆魂をこれからも受け継いでいきたいと思っています。